ザッカーバーグスピーチ 日本語訳

2019年3月12日

※以下の文章は、

村町睦様がYouTubeにアップした動画、

マーク・ザッカーバーグ スピ-チ ハーバード大学卒業式 日本語字幕付き」

の字幕を元に、当ブログの管理者西方むつみがリライトしたものです。

2017ハーバード大学卒業式
マークザッカーバーグ スピーチ

こんな土砂降りの中、集まってくれてありがとう!

せっかくなので、価値のある時間にしていきましょう。

ファウスト大学総長、監督委員会の皆さん、

教授陣、友人たち、同窓生、そして誇らしいであろうご両親、

顧問委員会の皆さん、そして、世界で最も偉大な大学の卒業生の皆さん!

私は今日この場に立っていることを誇りに思っています。

だって、僕ができなかったことを、あなた達はやり遂げたのですから!

(※ザッカーバーグは大学中退)

このスピーチをきちんとこなせれば、

僕がハーバードで初めて、最初から最後までやりとげたことになるでしょう。

2017年卒業の皆さん、おめでとうございます!

僕は、こういう場でスピーチする人間としては、

ちょっと珍しいタイプなのかもしれません。

いや、中退したってことだけじゃなく、

僕は、皆さんと同じ世代の人間ですからね。

僕たちは、10年も離れていない時期に同じキャンパスを歩き、

同じ概念を学び、同じEC10の講義で居眠りした仲間でもあります。

(※EC10は経済学の講義のひとつ)

そしてまた、ここまで違った道を歩んでもきました。

はるばるクアッドエリアからきた人だったりすると特にね。

(※クアッドエリアはハーバード大学のメインキャンパスからはかなり離れたエリア)

今日僕は、同じ僕ら世代から学んできたこと、

そして僕らがみんなと一緒に作っていくべき未来について話すつもりです。

でも少しその前に・・・

ハーバードでの思い出

この数日というもの、多くのステキな思い出が頭をよぎりました。

皆さんは、ハーバードから合格通知メールを受け取った時、

どこで何をしていたか覚えていますか?

僕は、「Civilization」というゲームしている時でした。

階下から父親に呼ばれて、階段をかけ降りていったら、

あろうことか父親は、ビデオカメラを構えていたんです。

僕が、リビングのPCでハーバードからの合格通知のEメールを開くのを、

撮影しようとしていたんですね。

すごく悲しいビデオになる可能性もあったのにね。

でも確かに、ハーバードに入学できたことは、

いまだに両親が、僕について最も誇りに思っていることだと思います。

ほら、そこでの僕の母がうなずいています。

でも、みんな僕の言ってることわかるでしょ?

ここを出てからだと、これ以上のことをするのは難しいって、きっと実感しますよ!

皆さんの中で、

ハーバードでの最初の講義を思い出せる人はどのくらいいるでしょうか?

僕の場合は、素晴らしい教授ハリー・ルイスによる、

コンピュータ・サイエンス121の講義でした。

僕は、遅刻しそうだったので、Tシャツの裏表を逆に着ていて、

背中のタグがすぐ前に見えている状態にも気が付かず、

「なんで誰も僕に話しかけてくれないのかな?」

と不思議に思っていた、という有様でした。

そんな中、唯一KX・ジンだけが、タグのことを指摘してくれて、

やがて一緒に遊ぶ仲になり、

今では、フェイスブック社の重要な部分を担ってくれています。

だからね、2017年卒の皆さん、

周りの人には優しくしておいた方がいいよw

しかし、僕のハーバードでの最高の思い出は、

なんといってもプリシラとの出会いです。

(※ザッカーバーグ夫人のプリシラ・チャン)

その時はちょうど、イタズラでフェイスマッシュというWebサイトを立ち上げ、

その事で大学の顧問委員会が僕に「会いたい」と言ってきたところでした。

そのことで誰もが、僕がもう大学を追い出されるものだと思ったみたいでした。

両親は荷造りを手伝いにわざわざやって来たし、

友人たちはご丁寧にも、お別れパーティを開いてくれました。

なんて人たちだw

ただ、幸運なことに、プリシラは友達とそのパーティに来ていて、

ベルタワー寮のトイレ待ちの列で出会いました。

そしてその日のうちに、

僕は、彼女にとって、

最もロマンティックになるはずであろうセリフを言いました。

「僕はたぶん、あと3日もすれば大学を追い出されそうなんだ。

だから、できるだけ早くデートしよう」

卒業生の皆さんは、今日、このセリフが使えるね。

「今日、大学を追い出されちゃうから、早くデートしよう」

結局、その時は退学にはならなかったんですが、後で自ら退学しました。

そして、プリシラと僕は付き合いはじめました。

映画「ソーシャルネットワーク」では、

フェイスマッシュはフェイスブックを作る上で、

とても重要な役割を果たしたように描かれていましたが、

実際はそうでもなかったんです。

でも、フェイスマッシュを作ってなかったら、

プリシラに出会えなかった可能性は高い。

なので、人生で最も大事な人と出会うきっかけになったフェイスマッシュは、

僕がハーバード在学中に作ったモノの中で最も大切だ、

と言えるのかもしれません。

だから僕はこの場所に感謝しています。

ハーバード、ありがとう。

人生の目的

今日は、「目的」について話します。

しかし「あなた自身の目的を見つけなさい」というような、

よくある卒業式スピーチをしたいわけではありません。

だって、僕らはミレニアル世代なんですから。

(※ミレニアル世代とは、2000年以降に成人になった世代)

そんなことは直感的にやっているはずです。

ですから、今日僕が話したいのは、

「自分の人生の目的を見つけるだけでは不十分だ」ということです。

僕らの世代にとっての課題は、

「”誰もが”目的意識を持てるような世界を創り出すこと」なのです。

僕の好きなエピソードがあります。

ジョンFケネディがNASA宇宙センターを訪れた時のことです。

ケネディは、ホウキを持っていた清掃員さんに、

何をしてるのか尋ねたところ、彼はこう答えたそうです。

「大統領、私は人類を月に送る手伝いをしているのです」

「目的」とは、僕らが自分以上に大きい何かの一部であると感じ、

その大きい何かに必要とされ、

率先して役に立ちたいと思える感覚のことなのです。

「目的」は真の幸福感を生み出してくれます。

卒業生の皆さんは、特にこれが重要な時代に生きています。

僕らの両親の世代では、

目的意識は、仕事や教会など、コミュニティが与えてくれるものでした。

けれども、現在ではAIなどのテクノロジーや自動化の技術が、

人間から多くの仕事を奪うと言われています。

また、コミュニティへの所属も減ってきている。

それによって、多くの人が疎外感を感じ、憂鬱な気分になっている。

その空白感をなんとか埋めたいと足掻いている。

私は今までしてきた旅の中で、

少年院や薬物中毒の子供たちが、

「もし何か他に、するべきことや、別の居場所があれば、

違う人生になっていたのかな」

と話すのを聞いてきました。

また、仕事を失い、次の居場所を探している、

工場労働者の人たちとも出会いました。

社会を前に進め続けるための、僕ら世代の課題は、

雇用を創出するだけでは足りないと感じています。

新しい世界に必要な、

新しい目的意識を育てていかなければならないのです。

僕はカークランド寮の小さな部屋で、

フェイスブックを立ち上げた夜を覚えてます。

また、あるレストランで友達のKXに言った、

次の言葉のことも、よく覚えています。

「僕は、ハーバードのみんなを繋げられて、とても興奮した。

だけど、そのうち誰かが、世界中の人々を繋ぐんだろうな」

その「誰か」が、自分たちになるだなんて、思いもよらないことでした。

僕らはただの大学生で、 業界のことは何も知らなかった。

大きい資本を持ったIT企業がいくつもあったし、

そのうちのどこかがやるんだろうと思っていました。

だけど、このことだけは確かにわかっていた。

人々は繋がりを求めている。

だから、僕らは日々、進み続けています。

皆さんも、これと似た思いを経験したことがあるんじゃないでしょうか。

「誰か」が起こすであろう変化が、

近い将来確実に起こるだろう、

という確信めいた思いを抱く、ということが。

しかし、それは「誰か」じゃない。

それはきっと、あなた自身がやるべきことなんです。

ただ、あなたが目的を見つけるだけでは十分ではありません。

あなただけではなく、

誰もが目的を持てるように働きかけることができれば、

それはさらに、世界を先に進めていくことに繋がるはずです。

私はとても苦労してようやく、そのことに気が付きました。

実際、僕の目的は、大きな会社を作ることではなく、

社会にインパクトを与えることだったんです。

Facebookで、初期から一緒に仕事をしてきた人たちは、

そのことを当然わかってくれていると思っていたので、

一々説明はしませんでした。

しかし時が経ち、Facebookが想像以上の成長を遂げた結果、

ある大きな会社からFacebookの売却を持ちかけられました。

僕は、売りたくなかった。

もっと多くの人たちを繋げたいとだけ考えていたからです。

その頃はちょうど、初期のニュースフィード機能を開発していました。

この機能で人々は、世界を知る新しい方法を獲得できる、

僕はそのことに夢中で、会社の売却なんて思いもよらないことでした。

でも、初期メンバーのほぼ全員が売りたがっていました。

これがスタートアップの大きな目標のひとつだということは、

理解はできました。

ただし、より大きな目的意識がないのなら、ですが。

このことがきっかけで、会社は分裂してしまいました。

激論の後で、ある顧問は僕に言いました。

「今売らなかったら、一生後悔するぞ」と。

人間関係はズタズタになり、

1年ほどで、経営陣の全員が会社を去りました。

この時が、Facebookを経営していて一番大変な時期でした。

僕は自分たちがやっていることの価値を信じていた。

だけど、孤独でした。

自分だけが間違っていたのか?

僕はただの詐欺師なのか?

それとも世間知らずの22歳のガキなだけなのか?

色々考え、悩んでいました。

何年もたった今では、それは、

「より大きい目的意識がない時に起きる自然なこと」

なんだとわかりました。

大きい目的を生み出せるかとうか。

それは個人の問題です。

その個々の目的こそが、世界を前に進めていく原動力なのです。

さて、今日僕は、誰もが目的意識を持つ世界を作るための、

3つの方法についてお話しするつもりでここに来ました。

その方法とは、次の3つです。

「大きい価値を生み出すプロジェクトに参加すること」

「平等を再定義し、誰もが目的を追う自由を持てるようにすること」

「グローバルなコミュニティを創り出すこと」

大きい価値を生み出すプロジェクトに参加すること

まず1つめ、大きい価値を生み出すプロジェクトに参加することについてお話します。

僕らの世代は、自動車の自動運転のような技術によって、

幾千万もの仕事が必要無くなっていく、

という事態と直面することになってきます。

しかし、私たちには、無くなる仕事以上のことができるチカラが備わっています。

どの世代にも、その世代を特徴づけるプロジェクトがあります。

ひとりの人間を月に送るために、

30万人以上の人々がプロジェクトに関わりました。

ケネディと話した清掃員さんも含めて。

世界中の子供たちを救うために、

ポリオのワクチン開発には数百万人のボランティアの尽力があった。

あのフーバーダムの建設にも、

数百万人以上の人々が関わりました。

過去、人々は様々に偉大なプロジェクトに取り組んできました。

さあ、次は僕ら世代の番です。

こう聞いて、あなたはきっと、

「ダムの作り方なんて知らないし、

何百万人を巻き込む方法もわからない」

と思うんじゃないでしょうか?

OK、ではとっておきのヒントを差し上げましょう。

誰でも、最初は知らない状態から始めます。

アイデアはいきなり完成した形で降ってくるなんてことはありません。

取り組んでいるうちに、だんだんクリアになってくるんです。

だから、とにかくまずは始めましょう。

もし最初から、人を繋ぐ方法を知っていなければならなかったら、

僕はFacebookを始められなかったでしょう。

映画やマンガ、アニメーションは、

このことについて誤解を広めているように感じます。

稲妻のような「閃いた!」という瞬間が訪れる、

というのはキケンな嘘です。

少なくとも僕にはそんな瞬間はなかったので、

映画などでそのような場面に出くわすと、

なんとも居心地の悪い気持ちになります。

その嘘によって、せっかく良いアイデアの種を持つ人々が、

稲妻のような閃きが訪れないからといってその価値を低く見積もる、

といったことが起きている。

そうそう、イノベーションについて映画が間違ってることがまだあります。

突然閃いた数式を、窓ガラスに書き留める人を、

実際に見た人はいますか?

誰もそんなことはしませんよね。

理想を求めること自体は良いことです。

しかし、理想を掲げると、何かと誤解する人々が表れます。

たとえ後に、それが正しいことだったとされるようなことでも、

少なくない変化を伴う改革を行おうとする人は、

大体世間からは狂人扱いされます。

複雑な課題に向かっている全ての人が、

「あなたは自分のやっていることを完璧に理解できていない」と責められます。

たとえ、あらかじめ全部わかってるなんてことが不可能な場合であっても。

最初の一歩を踏み出す全ての人が、急ぎすぎだと非難されます。

変化や改革にともなうリスクを恐れる人たちによって。

僕らの社会において、

目の前の失敗という小さなリスクを恐れるあまり、

必ずやってくる未来の変化に対して何も手を打たないという、

大きなリスクを犯している人のなんと多いことか。

確かに何か行動を起こせば、それなりに問題も起きるでしょう。

だからといって、それが始めることを躊躇する理由にはならないはずです。

では、僕らは何を待っているのでしょうか?

もう、僕らの世代が様々な課題に取り組むべき時が来ています。

僕らが地球を壊してしまう前に、

数百万人を巻き込んでソーラーパネルを設置して、

地球温暖化にストップをかけるというのはどうでしょう?

あらゆる病気を治療できるように、

ボランティアを募り、ヘルスデータと遺伝子情報を解析し、

シェアするというのは?

現在、私たちは病気にならないための予防法の50倍以上の費用を、

すでに病気になってしまった人の治療のために費やしています。

これではダメだ。なんとかしなければならない。

民主主義の現代化のために、オンラインで投票できるようにするというのは?

教育を、画一的なものではなく、

個人の興味や関心に応じて受けられるようにするというのは?

これらのことは、僕らがすぐに取りかかれるものばかりです。

誰もが目的を持ち、それぞれの役割を発揮するために、

取り組み始めましょう。

進歩の実現のためだけでなく、

多くの人の目的の創出が、社会を大きく前進させるでしょう。

大きい価値を生み出すプロジェクトに参加すること、

これが誰もが目的意識を持てる世界を作るための、最初の1つです。

平等を再定義し、誰もが目的を追う自由を持てるようにすること

2つ目は「平等を再定義して、誰もが目的を追う自由を持てるようにすること」です。

僕らの親の世代では、多くの人は、

キャリアを通じて安定した仕事に就いていました。

しかし今では、全ての人が起業家的であることが求められている、

と言っても過言ではない。

今までに無かった需要を汲み取る新しいプロジェクトを起こしたり、

それぞれ独自の役割を見つけ出そうとしたり。

これは凄いことです。

起業家精神を育む文化は、多くの進歩を作り出す方法そのものです。

起業家精神を育む文化は、新しいアイデアを気軽に試せる時にこそ栄えます。

Facebookは僕の処女作ではありません。

僕はチャットシステムやゲーム、学習ツール、音楽プレイヤーと、

色々作って、試してきました。

こういうのは僕だけの話じゃないんです。

JKローリングは、ハリーポッターを出版するまでに12回も断られました。

ビヨンセも、「Halo」を手に入れるまでに何百曲と作ったんです。

偉大な成功は、失敗する自由から生まれるのです。

しかし現在、経済的な二極化、貧富の格差の問題は世界中に広がっています。

もし誰かがすばらしいアイデアを思いついても、

それを実行に移す自由がなかったら、それは全ての人にとっての損失です。

今の僕らの社会は、既存の成功を過剰に賞賛する一方で、

新たな成功を生み出すための失敗を受け入れる環境を十分に作れてはいません。

その現実に、しっかり向き合いましょう。

僕はここハーバードを中退し、10年以内に何十億ドルと稼ぐことができた。

しかし一方で、何百万もの学生が学資ローンを支払えずにいて、

彼らはアイデアを持っていたとしても、

ビジネスを始めることすらできない。

そんな社会は、どこか間違っている!

僕はいろんな起業家を知っていますが、

その仕事では十分に稼げそうもないからやらない、

という人はいませんでした。

だけど、失敗したらもうやり直せない、

生活そのものが破綻してしまうといった、

経済的な理由で夢を追うことを諦めてしまう人は沢山見てきました。

良いアイデアやハードワークだけが成功の要因ではない、

ということは、誰もが感じるところです。

時には運に恵まれていることも必要だとも。

もし僕が家計を支えるために就職しなければならず、

コードを書く時間を持てなかったら、

もしフェイスブックがうまくいかなくても、

死ぬわけじゃないってことがわかってなかったら、

僕は今日、ここに立って皆さんの前でお話することにはならなかったでしょう。

実際の話、今ここにいる皆さんは、

スタートから相当ラッキーな人生を歩んできた部類に入ると思います。

世界が今現在にたどり着くまでに、

あらゆる世代が「平等」の定義を形作ってきました。

ある世代では、民主主義に関わる投票権と公民権のために戦いました。

その戦いは、ニューディール政策とグレイトソサイエティ政策に結実しました。

今度は僕らの世代が、変わりゆく世界に合致する新しい社会契約を結ぶべき時です。

これからは、GDPのような経済的指標だけではなく、

どれだけ多くの人が意味を見出だせる役割に就けているか?

という指標で進歩を測る社会にする必要があると思っています。

全ての人が新しいアイデアに挑戦するチャンスを得るために、

ユニバーサルベーシックインカムのような制度を検討すべきだし、

職場を何度も変えていく時代だから、

ひとつの会社に縛られない健康管理や、

仕事に就けるための育児システムが必要です。

僕らが生きていく上で、失敗というものは避けられないものです。

だからこそ、失敗を恐れずチャレンジできるような環境が必要です。

そして、テクノロジーは変化し続けます。

だから僕らは生きている限り、継続的に学習に取り組むことが必要になります。

ただ、これは言うまでもないことかもしれませんが、

どんな人でも、目的を追う自由を得るにはコストがかかります。

僕のような人間がそのコストを支払うべきだし、

経済的に成功するであろうあなた方も、そうすべきです。

だからプリシラと僕は、

チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブという団体を立ち上げ、

資産を社会の平等な機会促進のために寄付しています。

これが僕らの世代の価値観です。

僕らは、これらの寄付を行うことについて迷ったことはありません。

いつやるか、それだけが問題でした。

ミレニアル世代は、チャリティに積極的な世代です。

アメリカでは、年間ミレニアル世代の約75%が何らかの寄付を行い、

約70%が何らかのチャリティ基金を呼びかけているというデータがあります。

しかし、誰かを助けるのに必要な手段は、お金だけに限りません。

時間を使って何らかの活動をするという選択肢もあります。

週に1、2時間あれば、誰かに手を差し伸べ、

その人が潜在能力を発揮できるような手助けができるのです。

「そんなに時間はとれないよ」と思われるかもしれません。

かつては僕もそうでした。

プリシラはハーバードを卒業した後、教師になりました。

そして彼女は、僕との教育関係の仕事を立ち上げる際に、

一度クラスを持って教える、ということをしてみるべきだと言いました。

僕は文句を言いました。

「いや、僕も結構忙しいんだよ。この会社の経営だってしてるわけだし」

と。

それでも彼女はあきらめなかったので、

とうとう地元のBoys&GirlsClubで、

中学生に起業家精神についての授業を行うことになりました。

僕は彼らに、製品開発やマーケティングについて教え、

彼らは僕に、自分の人種が目の敵にされていることや、

家族が刑務所にいるのはどういう気持ちなのか、について教えてくれました。

僕が自分の学生時代のことを話すと、

彼らもいつか大学に行ってみたいという希望を語ってくれました。

それから5年が経ちました。僕は彼らと今も毎月食事をしています。

僕とプリシラにとって初めてのベイビーシャワーパーティを開いてくれたのも、

彼らの中のひとりです。

そして来年、彼らは大学へ行くことになりました。

一人残らず全員です。

彼らの家族では初めてのことです。

誰もが、他の誰かに手を差し伸べることができます。

全ての人が、自らの目的を追う自由を得るべきです。

そうすることが正しいから、というだけではありません。

そうすることで、より多くの人が夢を叶え、

素晴らしいものを産み出すことができたのなら、

僕らの社会全体が良くなるからです。

グローバルなコミュニティを創り出すこと

さて、目的意識は仕事だけから生み出されるものではありません。

誰もが目的意識を持つための、

3つ目の方法は「グローバルなコミュニティを創り出すこと」です。

ミレニアル世代が”everyone”という時、

それは「世界中のみんな」のことを指します。

外国から来た人、手を上げてもらえますか?

あと、彼らと友達になっている人は?

この通り、僕らは繋がって育ってきたんです。

ミレニアル世代にアイデンティティを問うと、

最も多い回答は「国籍」でも「宗教」でも「民族」でもなく、

「世界市民」だという調査結果があるそうです。これは凄いことだ。

全ての世代が「わたしたち」という概念の輪を広げてきました。

僕らにとって、それは世界中に広がっています。

人類の歴史は、より多くの人が集まり、

小さな集団から都市、そして国となっていく過程で、

それらの人々が協力し合うことで、

それまで成し遂げられなかったことを成し遂げてきました。

そして、その最も大きな潮流が、

今まさに世界中でグローバルに実現しようとしていて、

僕らは貧困や病気を終わらせることができる世代にもなれるのです。

我々の大きな挑戦は、より多くの協力が必要であることも、

想像がつくことと思います。

平均気温上昇問題やパンデミックに対して、

どんな国でも一国だけでは対処できません。

この先、世界の進歩に関する課題は、

都市や国単位にとらわれない、

グローバルなコミュニティレベルでの協力関係が、

必要になる場面が増えることでしょう。

しかし同時に、今現在は不安定な時代でもあります。

世界中にグローバリズムの恩恵を受けられない人たちがいる。

もし自分が暮らしている地域での生活に不満を感じているなら、

外の世界のことにまで目を向けるのは難しいでしょう。

そうなった時、自分とその周りの人たちさえ良ければいい、

といったグローバリズムとは反対の勢力が力を持つことになるかもしれません。

これが僕らの時代の課題です。

自由やコミュニティの力と、

権威主義、孤立主義、そして国家主義との対立。

また、情報、貿易、移民の流れを促進していく力と、

それらを抑制しようとする力との対立。

これは国家間の争いではなく、思想の違いです。

それぞれの国にグローバルな繋がりに賛同する人も、

それに反対する人も、混在しています。

これは国連のような大きい枠組みで解決できる問題ではありません。

もっとローカルなレベルで解きほぐしていかなければならない。

人は自分とその周りの生活が安定したと感じることで、

はじめて外の世界に目を向けられるようになるのです。

だからこそ、最善の方法は、今すぐローカルなコミュニティを立て直すことなのです。

人はコミュニティから多くの生きる意味や目的を見出します。

エリオットハウスの人はいますか?ロウェルハウスは?
あなたたちはコミュニティを見つけることができた。

文字通り、そのコミュニティとともに生きているんです。

それは寮だったり、スポーツチームだったり、教会だったり、アカペラグループだったり、
どんなコミュニティであっても、そこに所属しているというだけで、

何か大きなものの一部であり、
あなたは一人じゃないっていうことが実感でき、安心を得られます。

また、自分の可能性を押し広げる力をも与えてくれます
だからこそ、この数十年であらゆるコミュニティの4分の1もの
メンバーが減ったことは致命的なんです
今、他のどこかで目的を見出さなくてはならなくなっている人が大勢いる
しかし、我々は再びコミュニティを立て直すことも、新しく作ることもできます
多くの人はすでにそうしているでしょう
僕はアグネス・イゴイェに出会いました。今日の卒業生です
アグネス、どこにいます?
アグネスは子供時代をウガンダの人身売買が横行している紛争地帯で育ったのです
そして今、彼女はローカルコミュニティの安定に寄与する数千もの法律家のトレーニングをしています
また、ケイア・オークリーとニハ・ジェイソンにも会いました
2人も今日卒業します
ほら、立って!
ケイアとニハは、慢性病に苦しんでいる人たちと、
コミュニティ内にいる快く手を貸す人たちを繋ぐ非営利団体を設立しました
デイビッド・ラズ・アザールにも会いました
彼はケネディスクール(政策大学院)を今日卒業しました
元市会議員で、メキシコシティをラテンアメリカで最初の同性婚許可都市にするために戦いました
サンフランシスコより前にです
そしてこれは僕の物語ですが、
ある寮の部屋の1人の学生が、1つのコミュニティを繋ぎ、
そしてそれが世界中を繋げる日まで続けているのです
変化はローカルに始まります
グローバルな変化も最初は小さく始まる
僕らのような人と共に
僕ら世代において、もっと多くの人を繋ぐことができるかどうか
最大級の挑戦を達成できるかどうかは、
「あなたがコミュニティを創り出し、誰もが目的意識を持つ世界を創り出すことができるかどうか」にかかっています
2017年クラスのみなさん、
あなた達は目的が必要とされる世界へと飛び込んでいくのです
それが創り出せるかどうかは、あなた方次第なんです
「そんなこと自分にできるかな?」って思っていないでしょうか
僕がBoys&GirlsClubで教えたクラスの話を思い出してください
ある日の授業後、僕らは彼らに大学の話をしました
そしたら彼らのうち最も優秀な一人が手を上げて、
「自分は不法移民だから大学に行けるかわからない」と言いました
大学が彼をいれてくれるかどうか、彼にはわからなかった
去年、彼の誕生日に朝食に誘いました
何かプレゼントを渡したかったので、何がいいのか聞きました
そしたら、彼はクラスの学生たちが苦労していることについて話し始め
「社会正義についての本が欲しいな」と言ったんです
僕は本当にびっくりしました
彼は皮肉的な性格になっても当然な状況にいる若者なんですよ
彼のことを唯一知っている、
故郷である国が彼の大学への夢を否定するかもしれない
でも、彼は自分を悲観したりしませんでした
彼は自分自身のことを考えるのではなく
より大きな目的意識を持って、人々と共にあろうとしていた
彼の未来を危険にさらすことはしたくないので、ここで彼の名前さえ言えない
そんな社会状況ではありますが、
未来に何が待ち受けているかもわからない高校生が
世界を前に進める役割を担おうとするのなら、
私たちも世界のために役割を担うべきだ
みなさんがゲートを出て行く前、僕らはメモリアルチャーチの前に座り
ミ・シャベイラの祈りを思い出します
それは僕が困難に直面した時に唱え、娘をベッドに連れていく際にも
彼女の未来を思い、唱える祈りです
それはこう続きます
「先代より我らに祝福を与えてきた力の源よ、
私たちの人生を彩るため奮い立たせてくれる勇気を見つけるために力をお貸しください」
みなさんが、それぞれの人生を彩れるよう勇気を持てることを願っています
2017年クラスの皆さん、おめでとうございます!グッドラック!

Posted by 西方むつみ